ビクター ウッドコーン・プレミアムモデル『EX-AR9』の魅力 Vol.2
▲ 日本ビクター コンパクトコンポーネントDVDシステム EX-AR9
ビクター ウッドコーン・プレミアムモデル『EX-AR9』の魅力 Vol.1 の続きの記事です。
以前に、同社EX-AR3オーディオシステムから奏でられる音楽を聴いたこともあり、その時でも十分に満足できる音だったのですが、その後に進化を遂げたEX-AR7が発売され、さらに音に磨きをかけバージョンアップされたのがEX-AR9というモデル。
その音づくりは、もう理屈では表せないような様々なアイディアや試行錯誤の末にたどり着いた結果ともいえる、「EX-AR7」の完成度をより高めたモデルでした。
開発エンジニアの今村氏より、「生みの苦しみ」というよりも「生みの楽しみ」に近いようなことを伺ってきましたので、少し紹介したいと思います。
私自身は理解しているつもりですが、伺ってきたことをストレートに書きますので、どうぞ最後までお付き合いください。
EX-AR9は、アーティストの想いを伝えるビクタースタジオのマスターテープを原音とし、その感動をお客様に伝えたいという想いで創られた、ソフト制作のビクタースタジオとハード製作の日本ビクターが連携をし、共通の音を基準にして開発したDVDオーディオシステムです。
究極のPREMIUMフルレンジモデルとして完成させるための注目ポイントは以下の通り。
- 広い音楽空間の演出
- 解像度の向上
- 音場空間の拡大(上下・左右・前後)
- 重心の低い低音再生
- 中音域の厚み
- 高音域の抜けの改善
「CD/DVDオーディオプレイヤー+デジタルアンプ」一体型の本体に、「9cmフルレンジ・ウッドコーンスピーカーシステム」を組み合わせた、コンパクトコンポーネントシステムからは、サイズを超えたサウンドが存分に楽しめます。
スピーカーコーンは、音場空間をより拡大するために、伝播速度を向上させる、(振動板の前面に薄木板を十字に成形した)異方性振動板を採用することにより、水平指向特性が改善。
縦方向と横方向にバランスをとりながら、スピーカーのコンパクトさを感じさせない、ワイドな音場空間と解像度を実現しています。
ウッドボイスコイルボビン(左)を採用し、従来型(右)のペーパーコイルボビンと比較して約2倍の圧縮強度を実現。
振動板に力が分散されず伝達されるため、振動板を効率的に駆動することが可能になり、音声出力を大きくする結果をもたらします。
ウッドボイスコイルボビンのウッド素材は、鉋(かんな)の原理を利用した機械※にてカバ材を非常に薄くスライスさせたものです(※鉋盤とは違う種類の機械です)。
その薄さは80μm(0.08mm)、厚みの寸法公差は±10μm(±0.01mm)と、非常に精巧につくられています。
(上の写真では、手が透けて見えるのがお分かり頂けると思います。)
刃の調整には時間と技術が必要になり、上手くいって2~3時間は掛かるそうです。まさに技量と勘を頼りにした職人技。
この薄くスライスしたウッドシートに、含浸、和紙による補強、目止めの処理を施します。なお、一般的なボイスコイル製造に比べ5倍以上の工程が必要になるそうです。
(スピーカーユニットの)センターキャップの球形状を、SR23からSR15に変更※。
(写真左がEX-AR9用 右がEX-AR7用のセンターキュップ)
凸量を増やすことにより、聴感上において、広がりのある抜けの良い高域再生を実現しました。
周波数特性を計測してみると、水平方向30°の特性値を従来品と比較した場合、10kHz以上の帯域で改善されていることがわかります。
また、音の純度と広がりを向上させるため、このセンターキャップの裏側にメイプルの吸音材を接着しています。
※ SR** = 球の半径値を表す(機械製図で使われる記号)
ポールピース上部にも、メイプルの吸音材を接着。センターキャップ内側の吸音材を含め、木材の繊維方向を縦方向に合わせることで、吸音と同時に上下方向への音の広がりを実現しています。
その他、スピーカーユニットには、不均一コルゲーションダンパーの採用、エッジはブチルゴム材の見直しなど、細かい改良が施されています。
バッフル板の内側上部に、木目方向が縦目のスプールス響棒を設置することで、スピーカーの上側に音場を拡張。スピーカーサイズを超える音場空間を実現。
スピーカーユニット磁気回路部の装着木材をチェリー材(EX-AR7) ⇒ メイプル材(EX-AR9)に変更し、形状や取付位置を最適化しました。この改良により、不要振動低減効果による解像度の向上と低重心な低音再生を実現しています。
キャビネットは「チェリー無垢材」を採用(上下・左右方向で8.3GPa、前後方向で0..6GPaの強度)。
エンクロジャー内部側板に「チェリー響棒」を配置し、楽器のように綺麗に響かせるのと同時に音場空間の制御も行い、広い音楽空間を実現。
エンクロジャー底部に5つのパーツで構成される「竹響板」を配置。重心の低い低音再生を実現すると共に、音場感やスケール感を飛躍的に向上させます。
吸音材は、一般的な粗毛フェルトや羊毛の綿系吸音材ではなく、メイプル材のチップを使用した木製吸音材を採用することにより、スピーカーの鳴りっぷりの良さを実現しています。
アンプ筐体には、天面と底面に「木材ボード」を搭載。剛性を高めながら木材特有の内部損失により、不要な振動を減少させ、より濁りの少ない再生音を実現。
ディスクトレーにはスウェード調のボディと同色の塗装が施され、トレー裏側はハニカム構造のリブを成型し強度を高めています。従来品から樹脂の材質に変更がなければ、強度の高い“GFRP”が使用されています。
デジタルアンプは、第3世代目に進化したDEUSを搭載、デジタル・フィードバックとアナログ・フィードバックを組み合わせた回路技術にて、デジタルアンプの高音質化を実現しています。
ビクターエンターテインメントと協力して開発した、高音質化技術「K2テクノロジー」を搭載。これは、アナログ信号からデジタル信号への変換や、デジタル信号圧縮処理の際に欠落する音楽情報を、変換前の信号波形を想定して再生成する、ビクター独自の技術です。
その他、K2回路の定数変更や、オーディオコンデンサの部品変更、シャーシGNDの変更により、解像度を向上させています。
ビクタースタジオで、最終確認用のモニター機材として使用されているクオリティの高さ。
ウッドコーンスピーカーは、スタジオエンジニアの厳しい要求に応え、改良に改良を重ねてきた実績があります。
楽器のように暖かく心に響くウッドコーンスピーカー
ボリュームの位置を少し高めて、小さなスピーカーユニットを元気よく鳴らしてみて下さい。
たぶん、音楽を聴くことが、今まで以上に好きになるはずです!
ビクターマークのニッパー(犬)は、最高の技術と品質、お客様に新しい価値観を提供するビクターの象徴であり、常にお客様の声に耳を傾ける姿勢を忘れない、開発のポリシーを示しています。
ウッドコーン・オーディオシステムも、上記ビクターのポリシーより生まれ、改良や改善を積み重ねて現在に至っているのかなと、開発に深く携わったビクター関係者の方に直接お会いして強く感じました。
日本ビクター様、ビクターエンターテインメント様、WillVii様、貴重な機会をつくっていただき、有難う御座いました。
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