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2010/05/04

JAL 機体整備工場&客室教育・訓練センター見学会(3)|羽田第一格納庫(M1ハンガー)

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羽田空港に隣接するJAL「第一格納庫」。この機体整備工場は、通称“M1ハンガー”と呼ばれています。

中型航空機やジャンボジェット機が2機分入ってしまう巨大な施設で、広さは東京ドームと同じくらい、間口は約170m、奥行き約100m。高さ約40mもあります。高さは建物でいうと大体 10 階建てくらいです。

また、格納庫の扉を開けると、長さ約 3,000m の“A滑走路”がすぐ目の前にあります。

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建物の内装はラベンダー色(薄紫色)に塗られていて、人間工学的に整備の人が落ち着いて仕事が出来るように配慮されています。

天井部付近に黄色い構造物が幾つか見えますが、これは KITO 製の走行クレーンです。なお定格荷重は 10t でした。

下のほうに見える白い物は、(約 6 年ごとに行う)飛行機をペイントするときの幕です。ペイントする時は、塗料の噴霧が建物内に飛び散らないように、幕を下げて飛行機を覆います。

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▲ 外気導入用のダクト

このダクトからは、飛行機を塗装するときに溶剤がこもらないように、空気だけが出ます。

空調とはいっても、エアコンのように温度調節機能はないですから、格納庫内は夏は蒸し暑く、冬はとても寒いそうです。

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▲ ボーイング 767

この第一格納庫は定期整備専用で、この日は「C整備」のために“ボーイング 767”がドックに入っていました。

「C整備」とは、約1~2年毎に行われる(自動車の車検に相当する)定期点検のことで、“ボーイング 767”の場合は「6000飛行時間」あるいは「18ヶ月」のどちらかが、規定に達する前に整備を行います。

国内路線は飛行時間は短いが飛行回数は多い、国際路線は飛行時間は長いが飛行回数は少ないと、1日の飛行時間と飛行回数が違うため2つの規定を設けているそうです。

飛行機は、飛び上がると上空の気圧が低いことから、客室内を地上と同じ気圧にするために、気圧を徐々に上げて機内を膨らまします。降りてくるときには機内の気圧を下げて機体が縮むので、この膨張と収縮の繰返し応力が、外板の金属材(現在は主にアルミ合金で一番薄い箇所は約2mm)の疲労原因になることから、飛行回数が重要になってきます。

また、飛行機が着陸時するときには、数百t(トン)もある機体重量が、すべてランディングギヤ(車輪や着陸緩衝装置)に加わるため、この部分の保守・点検も飛行回数に応じて重要になります。

なお、このC整備は、1機あたり約45名のスタッフで数週間かけて整備をします(2交代制・朝8時~夜10時)。

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ドックは通常、飛行機が入ってきて、あとからつける様にして作業台が組まれていくそうです。

詳細な点検をしなくてはいけないことから、人が何処でも行けるようにするため、飛行機全体を包み込むように鋼材のやぐら(作業台)が組まれていきます。

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C整備は、降ろせる部品は取り降ろして、外せる備品は全て取り外して行われます。

機体には、幾重にも巡らされた骨格となる柱があり、柱と柱の間にはめ込まれた窓枠パネルはこのようになっています。

横に2つ並んで見える四角い部分が客室の窓で、材質はガラスでなくて透明プラスチック製(アクリル樹脂)。アクリル樹脂はガラスよりも軽く、耐衝撃性に優れ、加工もしやすいので、旅客機の窓に適している材料ですね。

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現在作業中の内容は、このように電光掲示装置にて格納庫内からモニターできるようになっていました。

“SHIP CONDITION”の『SHIP』とは飛行機のことですよね。これは、古くからの船(SHIP)の慣習が飛行機に多く引き継がれているからだそうです。

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C整備は、保守・点検のためにいろいろな所を見ます。

例えば、パイロットが操縦舵を操作して飛行機の向きを変える装置(主翼のエルロン ⇒ 補助翼、垂直尾翼のラダー ⇒ 方向舵、水平尾翼のエレベーター ⇒ 昇降舵)が、規定値の中できちんと動いているかどうか、エンジンが火災した場合を想定して、消火装置がきちんと動作するかなど、細かくチェックされるそうです。

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飛行機の整備は、あるドアから前とか機体胴体の区分を決めて、自社以外の航空会社でも行われることもあり、整備した航空会社を集めれば、飛行機1機を整備したことになるそうです。

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↑ すこし分かりづらいですが、コックピット。

操縦席の窓は、視界を確保するため大きく作られていますが、大きくすると強度が弱くなってしまうため、アクリル樹脂とガラスの多重構造になっています。

ちなみに、ジャンボジェット機(B747-400)の操縦席の窓は、曲面形状のため、1 枚あたり約 1,000 万円もするそうです。

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▲ エアバス A300-600

もうひとつのドッグには、エアバス社の「A300-600」が整備されていました。

エアバス社(ヨーロッパ)の航空機は、アメリカの「Pro/ENGINEER(PTC社)」という3次元CADで設計されています。また、ボーイング社(アメリカ)は、フランスの「CATIA(ダッソー・システムズ社)」の3次元CADで設計されています。

もともと3次元CADは、航空宇宙産業や自動車産業でかなり以前より利用されていましたから、老舗のボーイングは古くからのリソースを利用できる「CATIA」を今でも採用しているのでしょう。「Pro/ENGINEER」は比較的新しい3次元CADで、設計のしやすさや軽いソフト(コンピュータのハード的制約が少ない)なので、3次元CAD化が遅れていた家電産業など、新たにCADソフトを導入する企業に採用例が多いと聞きます。

アメリカの航空会社がフランスの IT システム、ヨーロッパの航空会社がアメリカの IT システムを採用しているのは、面白い現象ですね。

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航空業界では、IHI(旧社名:石川島播磨重工業)とか、MHI(三菱重工業)の企業名をよく目にしますね。

もう少し上流だと、JAXA(宇宙航空研究開発機構)ですが・・・

JAL 日本航空

※ この記事シリーズは、2010年2月13日に開催された、リンクシェア・サロン「JAL日本航空 機体整備工場見学会」に参加してきた時の模様を纏めたものです。


▼ JAL 機体整備工場&客室教育・訓練センター見学会

  1. プロローグ
  2. 空のエコ(JAL エコジェット)
  3. 羽田第一格納庫(M1ハンガー)
  4. 羽田第二格納庫(M2ハンガー)
  5. CA(客室乗務員)ができるまで
  6. 客室訓練部レビュー

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